学童期について

今年も4月6日から新年度が始まりました。

しかし今年度は新型コロナウイルスのため、とんでもない状況になっています。

状況はこれからも変化していくでしょうが、まずは一人ひとりが自覚を持って、状況に対して妥当性のある行動をとることを心掛けたいと思います。



さて、本来なら小・中・高校生はそれぞれ入学式を迎え、新しいステップに進みます。そこで今回はその中の小学生について少しお話ししたいと思います。




小学校に通う7歳から12歳くらいの期間を学童期と呼びます。発達段階で見ると、学童期はその大半が「具体的操作期」という時期に当たります。

「具体的操作期」の前は「前操作期」と呼ばれます。この2つの時期の違いはどのようなところにあるのか。その違いを、次のような実験で見てみましょう。(下の図をクリックしてください。図が拡大されます。)

具体的操作期(7歳~12歳)_①保存概念が身に付く_同じ!_②論理的に思考できる_(抽象的なものはわからない)_③複雑な関係性を理解できる


②論理的に思考できる (抽象的なものはわからない) ③複雑な関係性を理解できる. ブルドック. ラブらドール. 柴犬. 犬.②論理的に思考できる (抽象的なものはわからない) ③複雑な関係性を理解できる. ブルドック. ラブらドール. 柴犬. 犬.


上の図のように太さの違う容器に水を入れた時、細い容器に入れると水面が上がります。前操作期ではこのように変化する点に注意が向けられ、水が増えたととらえます。しかし具体的操作期では、元に戻せば最初の状態に戻る、途中で水を足していないので増えていない、水面は上がったが幅は狭くなったといった論理的な思考が出来るようになります。

 また見た目が違う犬でも、同じく犬という動物だと認識できます。

 しかしこの論理的思考も具体的なものに限られます。対象が抽象的であったり、仮説的なことを論理的に考えることはまだできません。

 学童期はこのような制約のある時期です。ではこのようは制約のある時期に、学習を促進する上で何が大切でしょうか。それを動機づけ記憶メタ認知の3点から考えてみたいと思います。


2020-06-18(Thu)
 

ワーキングメモリって何?

みなさん「ワーキングメモリ」と言う言葉を聞いたことはありませんか。

子どもたちの発達や、学習に関する話では時々出てくる言葉ですが、このワーキングメモリは全ての人にかかわりがあります。



では実際にワーキングメモリを実感できる課題をひとつ。

誰かほかの人に、隠して下記の単語を読んでもらってください。自分は見てはいけません。


「いぬ」「くつ」「ねこ」「かさ」


そして聞こえた順に言ってください。

つぎに下記の単語も同様に読んでもらい、答えてください。


「けみ」「ほゆ」「ぬへ」「なろ」


同じ情報量を覚える課題でしたが、あとの課題の方が明らかに難しいでしょう。

ここにワーキングメモリの存在を感じることができます。




ワーキングメモリ
ワーキングメモリ


ワーキングメモリとは、情報を一時的に記憶、処理する能力です。
私たちは頭の中に情報を処理するための机を持っているとイメージしてください。この机は今、ここにある情報を処理することに特化しています。よって情報は次々と更新され、一度削除された情報は戻ってきません。

また情報を処理する際は、自分の記憶している情報と照らし合わせて処理します。だから記憶にない「けみ」「ほゆ」などという情報は、処理することに困難が生じるのです。



このワーキングメモリは個人差があります。つまり人によって机の大きさが違うのです。これは人によって身長や体重が違うのと同じで、そのことにより得手不得手が生じるのと同じことです。

だからその人に合わせたやり方をすればいいだけのことで、少々めんどくさい場合もありますが、そのような方法を探すことが大切かと思います。

2020-06-18(Thu)
 

セミナーに行ってきました。

先日大阪で、発達と学習支援に関するセミナーがありましたので参加してきました。
今回はそのセミナーの内容についてお伝えしたいと思います。

「ワーキングメモリと学習支援」というセミナーで、講師の先生は広島大学大学院・教育学研究科の教授で湯澤正通先生でした。湯澤先生はワーキングメモリという視点から、子どもたちの学習に関する研究をされています。

学習支援という言葉から発達に障害があるケースを連想しますが、このワーキングメモリという視点は、すべての人に共通する視点かと思います。ここからは、そのワーキングメモリについて教えて頂いたことをお伝えいたします。

「A君はB君に勝ちました。B君はC君に勝ちました。C君はA君に負けました。
優勝したのは誰でしょう。」


実際にセミナーでもあったのですが、何の前置きもなしにこの文章を聞かされて即答するのは多くの人にとって難しいことでした。つまりワーキングメモリとは黒板のようなもので、今聞いたことを心の中に書き留めて、整理する機能です。そしてこの情報処理機能は個人によって処理できる情報量に差異があり、その情報量を超えてしまうと情報全体が消えてしまいます。
例えば上記の勝ち負けの話で、A君、B君、C君までなら即答できた人でも、これがD君、E君、F君と人数が増えてくれば、もうさっぱりわからない。A君が誰に勝ったかも忘れたとなるでしょう。つまり情報が消えてしまったのです。

ワーキングメモリは、思考と行動の制御にかかわる実行機能の1つです。
実行機能には、
① 目の前の課題に対して気持ちを切り替える機能。
② 課題に直接かかわらない出来事、関心事を抑制する機能。
③ 課題から新しい情報を得て、古い情報を更新していく機能
という3つの要素があり、3つ目の更新する機能がワーキングメモリに該当します。

先にも述べましたように、ワーキングメモリは個人差があります。ではその個人差とはどのようなものでしょうか。
それはワーキングメモリを構成する要素に関係しています。ワーキングメモリには数、単語、文章といった音声で表現される情報を保持する言語的短期記憶と、イメージ、絵、位置に関する情報を保持する視覚的短期記憶があります。これは使っている脳の位置にも違いがあり、言語的短期記憶が左脳、視覚的短期記憶が右脳となります。そしてこの左脳の機能が強いか、右脳の機能が強いかが個人差になってきます。ですからみなさんが何か学習する際には、自分がどちらの傾向かわかっているとやりやすくなるでしょう。たとえば単語を覚えるのに、見ている時間の長い人がいます。そうすると周りの人からはぼんやりしているように見られてしまいがちですが、視覚からのイメージで先ず覚える人もいるということです。そのような人に、とにかく書けと言ってもあまり効果的ではないのです。

 またワーキングメモリで処理された情報は短期記憶の状態です。今聞いて、それを処理した出来立ての記憶です。人はそれらを次の段階として長期記憶に落とし込んでいきます。つまり瓶へ移し替えるイメージです。そしてこの瓶にも個人差があります。一升瓶のように口の小さな瓶もあれば、ジャムの瓶のように口の大きな瓶もあります。ただしその瓶の容量は皆同じです。人間の脳はだれしも140億個の神経細胞で出来ています。

 ワーキングメモリは全ての人に該当する考え方です。どんな人にも得手、不得手があります。
子どもたちの場合、不得手な課題に出くわすと一見ぼんやりしていたり、放棄しているように見えることがあります。しかしその状態に至る前段階として、その子がどのようなワーキングメモリを持っており、目前の課題とどうミスマッチしているのかを丁寧に見る必要があると思います。

今回は久しぶりにセミナーのような勉強会に参加して、新鮮な気持ちになれました。
今後も機会を見てこのようなセミナーに参加し、私自身の知識も更新していこうと思います。
2019-06-19(Wed)
 

学習とは何か

「ベーシック発達心理学」 12章 学習の理論
今回の記事では、本著の後半にある「学習の理論」を一部ご紹介したいと思います。

そもそも学習とは何か?
心理学では学習とは「経験による比較的永続的な行動の変化」と定義づけされています。つまり何かを経験した結果、今までにない行動をするようになることです。これは良いこと、悪いことどちらも含まれています。例えば英会話の教材CDを繰り返し聞いて、発音を覚えるのは良い学習でしょう。また、試験前でもゲームをするのが止められない行動が習慣になるのも、悪い意味での学習になります。
英会話 game.png
                 どちらも学習です

このように学習とは今までにない行動を引き起こすことなのですが、それは周囲からの刺激環境と人との関係行動の変化と環境の変化の関係などから考えられてきました。それらは主に条件付けの観点からの研究で、「~したら・・・になる」を様々な視点から研究されてきたのです。

しかし人間の学習は条件付けだけで説明できるものではなく、様々な要因が絡んできます。その中の1つに「動機づけ」があります。動機づけとは、動物の行動を方向付け、持続させるものです。
この動機づけの説明では、動因誘因という2つの考え方があります。
少々極端な例ですが「食べる」ということを学習するとしましょう。この際空腹を感じることが動因となります。時間の経過で体内のバランスが崩れ、血糖量が低下すれば、人間は空腹という動因を減らしていくために「食べる」という行動をとるようになります。
しかし人間はお腹がいっぱいでも自分の大好物が出てきたら食べてしまいがちです。この大好物が誘因です。人間の生理的な環境が十分であっても、更なる動機づけがなされる場合があるということです。

もう一つの例として次のようなものはどうでしょうか。部屋が散らかっているとお母さんに怒られるから掃除するということはよくあることでしょう。しかし自分にとって居心地のいい場所にしたいから掃除するということもあるでしょう。前者を「外発的動機づけ」、後者を「内発的動機づけ」と言います。
学校での勉強については、もちろん内発的動機づけがいいとされます。つまり勉強が自分にとってプラスのイメージになるということです。そうでないと内発的となれません。しかしこれは難しいことでしょう。勉強という抽象的な対象をどのように捉えるか、そこにポイントがあるように思います。
勉強 やるきヤル気なし
      内発的動機づけアリ                 内発的動機づけナシ

次回は子どもが対象をどのように捉えるようになるかというページを紹介し、動機づけと関連させて考えてみたいと思います。
2019-05-26(Sun)
 

生まれか、育ちか

「生まれか、育ちか」(遺伝か、環境か)

 前回の記事では、生まれに関わる遺伝的要因と、育ちに関わる環境的要因が相互に作用して人間は発達していくとお伝えしました。

 さてこの遺伝的要因と環境的要因ですが、互いに独立して発達に関わっていくのではないようです。例えば遺伝的に外交的な性格の人は、様々な活動に参加し外交性を高める環境にさらされることで、ますます外交性が高くなる傾向があります。 つまり遺伝がその遺伝を強める環境をさらに呼び込むようになるのです。

外交的        外交的2
        

また環境について次のような研究もあります。環境が遺伝による性質の発現を強めたり、弱めたりするというのです
これは一卵性双生児の研究から分かったことです。一卵性双生児は遺伝的には類似しています。しかし50歳の一卵性双生児は、3歳のそれに比べて分子レベルで差異が大きいことが示されました。
つまり同じ遺伝的要因を持っていても、環境によってそれが現れたり、抑制されたりするのです。

双子1双子2
 このようにみると人間の発達は本当に複雑で、AだからBと言い切れるものなどないように思います。ただ、子どもたちの成長について悩むことだけは言い切れるでしょう。



2019-05-16(Thu)
 
プロフィール

yusingakuin

Author:yusingakuin
京都・北大路で個別指導塾・有伸学院を開いております宮武明浩と申します。
このブログでは、発達に関する本をご紹介いたします。できるだけ色々な本をご紹介したいと思います。
よろしくお願いします。

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